日本を復習する。

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 今は昔の97年5月に日本を離れた僕は、北京、上海、また北京という流れを経て、日本に一時的な帰国をした後、サクッと渡豪した。その間、途切れ途切れに帰国はしていたものの、まとめて一定期間帰国するのは、これが初めてということになる。

 そういう立場になってみて、僕は、以前中国にいた頃に、現地で留学していた若い学生の言っていたことを思い出した。

 「就職面接だったんですけど、北京で大学を出たって言ったら、『じゃあ日本のことはわからないんだね』って言われて」

 物理的には事実だ。しかし、精神的には、より強い興味を持って故国を観察するようになるのが常であり、本来なら外国在住の方が日本にいるよりも日本を見知っているものだ。もちろん全てが全てではないし、宗教に走る若い学生もいるが、しっかりした学生もいる。僕はその面接官の浅はかさには失笑するのと同時に、物理的な面を埋めなければならないのではないかという思いに駆られた。

 この20年は、日本がバブルの傷跡から立ち上がり、さまざまな意味での復活を果たしてきた20年でもあり、世界のIT界がイノベーションを繰り返してきた20年でもある。それだけに、いきなりITに転んだ僕に取っては、壮年走馬灯を回さなければならないという急務に直面することになった。

 僕が選んだ方法は、元々の出身分野であるサブカル、そして本だった。

 ツールはアマゾンとメルカリ、後はもし条件が許せば外出もしていただろうが、現状なかなか外出もできないので、家の中でできる前者に大量の現金が流れていった。

 特にIT関係はネットにも書籍にも歴史の足跡が残っており、それらを渉猟する日々が続いた。実際には、悪い癖だが集める方に力を注ぎすぎて、なかなか読みきれていない。技術的には最近のものを、そして、インシデントに関しては、この20年から30年の間のものを満遍なく買った。メルカリは僕に感謝して欲しい。Amazonも同じだが、要は通時的なものについては他人の青春をメルカリで買い直し、共時的な知識はAmazonで仕入れたのだ。

 さらに、今度はニンテンドーSwitchを買った。ちょうどプログラミングのソフトが出たので、これまで無視していた本体を思い切って買った。今、少し遊んでいるが、画面もクリアになり、3DSと比べて音質もかなり向上していて良い。しばらくはこの機械でやっていくんだろうなと思うが、Wiiの運命を考えると、後数年で新しい機械が出そうで怖い。しかし、話題についていくためには仕方ないと割り切った。Amazonが安いセットを出してくれたのも良かった。すかさず買って、使ってみた。

 アプリで漫画も大量に、試験に影響する位読んだ。アプリで読みきれないものは買った。特に、『彼女お借りします』は、メルカリで大人買いした。高かった。他にも、『リアルアカウント』も買った。こっちは完結していたので助かった。他にも『』も買った。『ブラッディ・マンデイ』(ビデオもAmazonで見た)と『静かなるドン』、『将太の寿司』はアプリで読み終えた。『神の雫』も名作だ。これらのどれもが、ある程度売れたもののようだったので、アプリの選択眼というか、流石に売れるものを引っ張ってくるんだなあと感心したし、売れる作品の違いのようなものを感じ取ることができたと思う。

 もちろん、人生半分以上終わっているので、感じ方は違うと思うが、基本的に頭の中は永遠の18歳なので、まだまだ吸収を続けている。というよりも、何かを日本に置いたまま出かけたような部分があり、更に日本に戻ることを拒否していたような節もあるので(気候に馴染めない)、もしかすると今回の吸収作業も次の出国の下準備である可能性がある。来年、コロナが一服したらまたどこかにいくかも知れないからだ。

 ニュースではもちろんさまざまなことが仕入れられるが、それはマクロな情報でしかない。ミクロの社会がどう動き、人々が特定の時代背景の中で何を良しとしたかは、サブカル作品によってのみ知ることができる。漫画はその時代の鏡であり、価値観の成果物なのだ。そうした手段が自由に行使され、それを誰もが手に取ることができる日本という国は、恐らく他の国に比べて幸せな国なのだろうと思う。

 しかし、人口比でいけば、日本というのはこうした人材が溢れており、他国の追随を許さない。そんな特殊な国に生まれ、そこを基準にものを見てきたのは幸か不幸か。そんな特異な国の我々は、今一度自らの環境を見直してみる必要があるのではないか。「復習」の道半ばながら、今はそんなことを考えている。

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