
どこの国でもいいのだが、長くそこに暮せば、そこの基準でものを考えるようになる。その意味で、僕はある意味非常に恵まれたインフラのある国二国で生活してきた事になり、基準が上がってしまっている。もちろん、中国は最初は何もなかったのだが、一回目覚めると反応が素早いので、サクッと発展を遂げてしまった。日本は台湾と同じくそれほど成長の幅はなく、面白味もなかったが、基礎がしっかりしている分、それなりの便利さがあった。
特に首都圏における宅配のスピードは、両国共に目を見張るものがあると言える。注文から4時間で届くとか、翌日届くとか、考えてみたらとんでもない話だ。
なので、豪州にくると酷く辛い思いをすることになる。これは日本滞在経験のある豪州人自身も感じていることらしい。
まず、アマゾンは届くまでに最低1週間かかる。「火曜日までに」と書いてあって安心して購入ボタンを押したら、翌々週の火曜日だったことはザラだ。マーケットプレイスも、なんだかみんなして「すぐ発送」という考えがないようで、ある日にまとめて送っている印象が強い。物によっては、いつ来るの、と聞いたらそのままキャンセルとか、「発送していませんでした」とか平気でやってのける。プライムでも同じだ。これは、プライム翌日配送に慣らされた身にとっては非常に辛いことだ。早めの出荷をする店舗もあるが、そこも処理状況はそれほど分かりやすくなっていない。「オーダー手配終了」の表示が出ていて、「え、まだ届いてないんですけど」と問い合わせると、「こちらの処理が終了したということなので、あと2−3日待ってください」と返事が来る。そこはまだいい方で、その翌日くらいには配送されてきた(素直に喜んだ)。
また、電気や水道の修理に至っては、やったらやりっぱなしで帰る。帰った後は足跡とゴミだらけになっているケースがほとんどだ。これをフロントに聞いたら、「法的には求められていない」と来た。これは前にも書いたが、「他でしてもらえるサービスだって法律には書いてないよね」と言ったら相手が黙った。要は法的に求められていなければやらないのだ。相手の都合は考えない。アパートの契約も、途中で解約すると、次の借りてが付くまで家賃を払い続けなければならない。これも業界ルールにあるらしい。全部が業者都合になっているのだ(綺麗にしようという努力を見せた業者も一人いた)。
こうした現象は日本で暮らしていた人間にはたまったものではないだろう。
つまりは、条文に書いてある最低限のことをすることしか頭にないのだ。教員も線引きははっきりしていて、それ以上のことはしない。これは、日本の企業文化がマゾで、余計なことをいっぱいしているのか、それとも豪州がルール社会で、それ以上のことはやってもやらなくても同じだと考える昔の中国的状況にあるのか、どうも比較のできない微妙な状況にある。
ただ言えるのは、サービスというのは、この国ではあまり重んじられていないというか、言い方は悪いかも知れないが、昔の中国と同じく、サービスを引き出す工夫が求められるということだ。大昔に職場で話したことがあるのだが、「サービスとは相手に時間を差し出すこと」、つまり、相手の時間の節約を図ることであって、例えば買い物した相手がそれに余計な時間をかけざるを得ない環境を作ってしまったら(例えば帰った後掃除しないといけないとか、2週間待つとか)、それはサービスではなく、ATMやアウトレットと同じような、セルフサービスでしかない。料金はとっておいて、「法律に書いてあること以外はできません」と、周辺サービスを怠るのは、企業が「自分は能無しだ」と言っているに等しい。この点で、豪州は日本とは違った意味で人間味に欠けている。日本は冷酷という意味ではネガティブな人間味がある国だが、豪州はもしかするとルールマシンのような、枠内のことに徹する、つまり枠外のことをしてマイナス点をつけたくないという欧米の法律文化の負の影響があるのではないかと思う。東洋的人間味は必要とされず、しかし、その「枠内」の余地を探さなくては何も得られないということなのだろう。
不動産も、売ってる奴は売ることしかしない。法的なことは弁護士に勝手に聞いてくれ、と来るし、その他もフォローはない。いわば基本が殿様商売になっているのだ。
逆に、内務省が毎回ビザをサクッと出してくれるのは、恐らくはその性格の「良い点」が発揮された結果なのだと思う。と考えると、小売業、なんとかならんものだろうか。コロナを機会に、今後オンライン化が進むだろうという時代の変わり目で、この状況はあまり褒められたものではないと思うのだが、その環境で育ったら、やはりそれでも便利と感じるようになるのだろうか。
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