
学部か院かを問わず、学生としては常に点数による評価に晒されるのが世の常だ。
実を言うと、僕はこれまで全く「回答の方法」を考えずに課題に立ち向かい、あんまり良い戦績を残してくることができずにいた。その方法とは、Rublic(ルーブリック)だ。前も少々書いたかも知れないが、今回は新しい展開があったので、書いておきたい。
欧米に留学している人ならこんなことは常識なのだろうが、僕はその作用に気付くのが遅かったし、実際にボンドBBTなどで使用されていたルーブリックは曖昧なもので、数値基準や内容基準は然程具体的に記されてはいなかったのだ。更に、教員の欲しい答えが曖昧なままだったので、何を書けば「カリキュラム内で教えている内容が目指しているもの」を充足させることができるのかなどわからない状態で、思ったこと、調べたことを書く他なかった。それも、返答は点数だけで、そこから這い上がる術もない。これではなんの為の教育かわからない。「お前はxx点や。ほなさいなら。」でおしまいなのだ。
その為、その結果は科目によってはDだったが、科目によってはPと、非常に不本意な評価が続いた。結果として、僕のモチベーションはすっかり下がりきってしまった。そこに日本人向けの奨学金ももらえないと来たら、やる気はマイナスにしかならない。
念の為に書いておくと、アジアの大学院では、少なくともそのようなことはなかった。未熟ではあれ、理解したことや調べたことを書き記し、そこに考えを付け加えれば、何らかの評価は得られた。もちろん、その時代にルーブリックはなかった(日本ではまだ少ないようだし、僕が日本で勉強していた当時の中国にもそんなものはなかった)。点をくれるかは「お付き合い」な部分もあった。多分それは「徒弟制度」的教育制度を持つ国であるかどうかが決め手となるのだろう。今から考えれば、人間関係で全てが決まるのも考えものだとは思うし、それはそれなりの難しさがあったように思う。
要は勝手の違う状況で困っていたわけだが、今回の科目は全く違う展開を見せた。
今学期受けた科目の課題ルーブリックは、ちゃんとガイドの役目を果たしたのだ。何が違ったかと言えば、そこには具体的な「書くべき内容」が示されていたのだ。更に、数値目標、例えば問題を5つ挙げているか等まで示されていたのだ。
だが、 元はと言えば、今回のレポートは全く意味のわからないものだった。「自分の持っているデジタル端末を一つ選び、それについて評価せよ、そして証拠として採集する場合、どのような注意が必要か、更には、今後技術的にどのような展開が起こりうるかを3500ワードで書け」と言うものだったのだ。何言ってるんですか?という疑問を持ちつつ、僕はギリギリまで何を書くべきかに思いが至らずに無駄な時間を過ごしていた。イメージが湧かなかったのだ。
転機はあった。締め切りに近づくにつれ、僕は内容に「思い当たる」ようになった。何をどう組み立てればいいのか、その指示のようなものがしっかりと書かれていたことも幸いした。
さて、そのルーブリックには何が書かれているのか。上のリンクを見れば、大体想像はできると思うが、それは以下のようなものだ(なお、「ドットポイント」は、ルーブリック内に明確に「この点を議論せよ」と示されていた「質問」だ。これがあること自体が珍しいのだが、レポートたるものは、ミスリードしない為にもこうあるべきだと僕は考える)。
HD(High Distinction/85<X)
All of the dot points have been discussed to an excellent standard. The student has made excellent attempts at sequencing of the discussion and has linked themes together with excellent discussion. They have shown clear signs of superior independent research in discussing the dot points.
すべてのドットポイント(設問内容)が優れた水準で議論されている。 議論の順序付けに優れた試みがなされており、優れた議論でテーマを結びつけている。ドットポイントの議論では、優れた独自の研究の兆候を明らかに示している。
D(Distinction/75<X<85)
All of the dot points have been discussed to a good standard. The student has made great attempts at sequencing of the discussion and linking themes together. They have shown clear signs of independent research in discussing the dot points.
すべてのドットポイントが良い水準で議論されている。 学生は、議論の順序付けとテーマの連結に大きな試みを行っている。ドットポイントを議論する際に、独自の研究の明確な兆候を示している。
C(Credit/65<X<75)
All of the dot points have been discussed. The student has made good attempts at sequencing of the discussion and linking themes together. They have shown clear signs of independent research in discussing the dot points.
すべてのドットポイントが議論されている。 議論の順序を考え、テーマを結びつける試みがなされている。ドット・ポイントを議論する際に、独自の研究の明確な兆候を示している。
P(Pass/50<X<65)
Some attempt has been made to cover most/all of the dot points but the discussion is only adequate. The student has not fully developed ideas or has failed to cover all dot points in a comprehensive manner.
ドットポイントのほとんどまたはすべてをカバーするためにいくつかの試みがなされているが、議論が十分ではない。アイデアが十分に練られていない、あるいはすべてのドットポイントを包括的にカバーできていない。
F(Fail)
Little attempt to cover any of the required dot points or not all dot points have been covered and those that have are discussed without much attention to detail or thought.
必要な点をほとんどカバーしていないか、あるいはすべての点がカバーされておらず、カバーされていても細部や思考にあまり注意を払わずに議論されている。
これでもまだ不明瞭な感じはするのだが、今回は「ドットポイント」がかなり決め手になっていた。要は、「議論するポイント」として、いわばお題目が示されていたのだ。
そのお陰もあって、今回は以下のような点数で返ってきた。
- Introduction (14/15)
Thorough introduction
評語>徹底した導入内容
・EAPなどの授業でも散々教えられるのだが、この部分では、全体を俯瞰する内容紹介が求められる。文字数は約10%、今回は3500ワードなので400ワード程度。
そして以下のSectionはBodyにあたり、80%の文字数(今回は2500ワード強)をそこで使わなければならない。。 - Section 1 (16/20)
Good coverage of the benign and potentially criminal uses of the target device, and why you chose it.
評語>対象となるデバイスの良性の用途と犯罪の可能性のある用途、そしてなぜそれを選んだのかをよく理解している。 - Section 2 (26/30)
Good coverage of many of the key principles and best practices delivered through the narrative of recovery on your target device.
評語>ターゲットデバイスでのリカバリーの物語を通じて提供される多くの重要な原則とベストプラクティスをよくカバーしている。 - Section 3 (17/20)
A well thought out discussion.
評語>よく考えられた議論。 - Conclusion (13/15)
Good coverage of the main themes.
評語>主要なテーマをよく網羅している。
・ここでも約10%(今回は400ワード程度)を用いる。内容は、完全に上の内容の重複(まとめ)となり、新たなアイデアを入れてはいけない。
これで合計86点となり、今回の課題はHDとなった。もちろん、期末試験でもPASS以上、つまり50点以上を獲得することが求められるが、まず一山越えたことになる。
今回の科目は、課題全体が非常に優しい(わかりやすい)構造になっているように感じている。と言うのも、前回の課題2はテクニカルな課題で、データの扱いが問題にされ、細かくデータを探すことで満点(100%だが、実際のウェイトは15%)でクリアできた。その前の課題1はいわば並で、74%(ウェイトは5%の「ウォームアップ」的課題)の出来だった。三回の課題の合計は48.8/55(89%)となり、まだいいところを走ってはいるが、45%を占める期末が鬼門だ。論述や選択問題のあるテストでは、まず満点はないので、どこまで足掻けるかが決め手になる。
グリフィス時代と同様、科目内容のまとめは記録していくつもりだが、いくつかの科目はRPLで免除されており、全部を網羅することはできない。ただ、その分、オンラインで学ぶことの優劣についてはわかったことを書き記していきたい。
もちろん、オンラインならではの楽しみ方も、もっと書いていきたいと思うので、ご期待頂きたい。
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