[学校選択]オンライン留学フェアは終焉の始まりか。

©️2021 Australian Government

 これまでほぼお茶の水で開かれてきた留学フェアが、今年はネット上で行われた。

 実際どんなノリなのかと思い、しっかりと事前申し込みをし、送られてきたURLで参加してみた。今でこそ上のような表示になっているが(個人的にはチャット以外は全部通年で表示しておけばいいと思うのだが)、当日は味気のないバーチャルブースや相手によっては答えの帰ってこないチャットボックス、パンフのダウンロードやビデオなど、体裁としてはできることをオンラインにした感が出ていた。

 しかし、ここに出ていた学校には偏りがあり、全部が出ていた訳ではなかったのと、学校ごとの温度差もあり、何よりもビザをとっても入国できない状況で留学は語れないので、非常に空虚な内容になっていた。チャットメッセージは30000を超えたらしいのだが、僕一人でそこに100本位貢献しているのと、ページを開くと自動で相手の機械的なメッセージが届くことから、恐らく実際の交信人数は200人そこらだったはずだ。それも恐らく日本側の受け手であるオーストラリア留学センターの日本人スタッフが応じていたので、盛り上がりにかける出来だった。かたやパンフのダウンロードは5000強、ビデオの視聴も1000強あったらしいのだが、その効果たるや恐らく回復不能なダメージの中にあるような気がしている。

 そんな中で、栄陽子氏然り、ホリエモン然り、留学に対するスタンスの激しい転換が起こっているのは見逃せない。前にも色々書いたが、豪州に限って言えば、「留学する価値がどのくらいあるか」という問題に対する答えは消極的だ。特に僕の中ではかなり冷めたものになっている。いいのは気候とコアラだけ(豚肉とフルーツは価格も含めてまあまあイケたかもしれないけど)、オリジナルな食品はVEGEMITEだけ、物価も学費も死ぬほど高く、アジア人は出世から一番遠く、杓子定規で余所者には冷たく、店は全部20時には閉まり、通販が平均二週間後に届く国のどこがいいのか、という話になってしまう。我が悪夢のサンシャインコースト大学がブースを出しているのを見るに至っては、笑いと怒りを堪えるのに大変だった。間違っても僕の知り合いを毒牙にかけるわけにはいかないからだ。

 数々の現実の薄情さと白々しさを現地で見てしまった僕にとって、これしきの「フェア」では何の魅力も感じられる訳がない。本来ここに必要なのは、エージェントのエゴでなく、学校や政府の身勝手な居丈高さでもなく、如何に学生にサービスを提供し、手軽に留学してもらうかというそれこそ「熱烈」な姿勢のはずだ。こんなやる気の感じられないフェアではない。ましてや、オンラインの普及で留学の意味が否定され、さらに、各国の情報が満遍なく手に入るこの時代になって、オーストラリアは学費的にも生活費的にもネームバリュー的にもそんなに美味しい場所ではなくなってしまっている。今ネットを見回すと、教育の歴史の長いアメリカやイギリス、そして面白そうな他の国が平等にネットに顔を出しているのだ。そして何よりも、日本からでよくね?という疑問が提示されるようになっている。ネットの破壊力を真正面から受けているのが留学という選択肢なのだ。

 来年も僕は性懲りも無く覗くことにはなると思うのだが、、、それはオフラインならであって、オンラインではもう覗く気は起こらないだろう。その位、豪州政府のやる気が感じられないフェアだった。これは本当に政府が教育産業を本土化しようとしているという一連の意向の現れなのではないかとすら思わされるイベントでもあった。

 現状を見る限り、検疫にうるさい豪州政府の立ち位置から見れば、来年も国境は開きにくい状況にある。もし、僕の推測が当たっているならば、今年は教育業界の清算が始まる年度になると考える。留学生ではなく、本土の学生をもっと就学させ、就業させ、自国の産業と消費を盛り上げないといけないという現実が突きつけられているからだ。それには外人を育てるのではなく、豪州人を育てて、産業を育てなければならないのである。観光と留学は、完全に外国の顧客に頼る産業であり、豪州の生命を長らえさせることには繋がらない。今豪州に必要なのは、豪州が主導できる市場の形成であり、工業・産業の育成であり、その意味ではモリソン政府は豪州第一主義の推進を考えているのかも知れない。

 言い方を変えれば、ある種の革命のスイッチが、コロナによって入れられたというべきなのかも知れないのである。その角度から考えれば、留学フェアがしょぼくなるのは、時代の流れを反映したものであるとも言える。

 キャンベラあたりから、「各大学、ボーっと生きてんじゃねえぞ」という声が聞こえてくるようだ。

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