
「あんがががっ」。
頭蓋骨の内側を擦られるようなヒリヒリした感覚が、僕の涙を呼び起こしていた。
何本も突っ込まれるのかと思ったら、なんと検体採取用の綿棒は一本だけ。それで喉を擦ったと思ったら、そのまま左右の鼻の穴に突っ込まれたのだ。思い切り萎えた。もちろん、咽喉と鼻腔は繋がっているので、仕組み的には間違い無いのだが、心理的ショックは大きい。「鼻が先じゃなかっただけマシ」と理解するしかないようだった。
さらに、そこでは日本政府の要求する検査結果はもらえない。24時間から72時間待て、そこでメッセージが入るから、それを待ってクリニック(GP)を予約しろ、というのである。何度手間なのかわかりゃしない。
そんな僕が検査に出かけたタイミングは最悪で、大雨だった。その日(元旦)はブリスベンの旅に行った帰りで、結構疲れており、雨はかなり響いたのだが、そんなことを言っていても始まらない。僕は病院の指定場所に出向いた。
実はこの検査にも二幕ほどエピソードがあった。場所が分からずに病院に訪ねていったら、患者と勘違いされて病院スタッフに追い出されたのだ。全く何も考えずにそのような行動に出るのがオーストラリアらしいのだが、失礼にも程がある。結果として場所は聞き出せたので良かったが、全く頭を使わないスタッフには呆れた。逆に検査窓口は非常に丁寧で好感がもてた。
窓口は病院の奥の方のブロックにあり、聞けば1日に400人くらい客が来るという。まだポジティブの例は報告されていないので、要は平和な検査窓口だ。まず名前と電話を登録、次のデスクでパスポートを確認する。そこから別ブースに通され、先程の鼻と口からの標本採取が行われた。
繰り返しになるが、結果は24〜72時間後にメッセージが来るという。しかし、日本政府は規定フォームでの回答を求めているので、そのフォームを見せてどうすればいいのかを聞くと、「メッセージを受け取ったらすぐ近くのクリニックを予約して、そこのお医者さんにお願いして」といい、とりあえず問い合わせ可能なクリニックまで調べてくれた。こんなギリギリのタイミングでそこまでやらせるのか、という日豪双方への不満が募ったが、仕方ないので一日待ってみることにした。幸いこの検査は無料で提供されているので、その辺は助かった。
翌日の21時過ぎだったろうか、メッセージは確かにきた。

そこで僕はHOTDOCというアプリを使い、近くのクリニックの医師を予約した。
ボンド大学のすぐ裏手にあるクリニックは、意外と客が多く、僕も予定より少し長めに待たされた。が、出てきたインド系の医師は非常に優しく、さっさと診断書を書いてくれて、さらに保険証の手続きがうまくいかないのをみると、費用の割引までしてくれた。アジア系、いい奴が多い。
日本政府が急に豪州を検査を要求する国のリストに加えたこの期間、わざわざ日本に帰る者にはこのフォームが要求されるのだから仕方ないが、患者のいないゴールドコーストで過ごしていた者にとっては、とばっちりでしかない。が、とりあえずここで任務は完了した。帰国後の話については、また別に筆を起こしたい。
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