
これまでも書いてきたが、コロナウイルス騒ぎが始まって以来、オーストラリアの教育業界はズタボロになっている。政府はジョブキーパーやジョブセイバーなど、雇用者を介した失業者らの扶助には乗り出しているが、相対的に見て教育業界にはほぼ補助がついていない様子だ。その結果は万単位での失業であり、教員・職員全体が影響を受けている。
もちろん、当局には様々な思惑もあるだろうし、もしかするとそれは高等教育機関の再編の動きということなのかも知れない。つまり、コロナをいいチャンスに、国内で膨張する教育業界を再編するのである。何より、留学生に頼りきりの教育業界の背筋を正し、M&Aでの合併を促し、教育業界の体質改善をはかるつもりであるならば、今の連邦政府の姿勢もなんとなく理解できるというものだ。変に欲を掻いてきた各州の学校は、これで総崩れとなり、今まで権勢を振るってきた各校の幹部は瞬時にその力を失うことになる。
とすれば、この動きは面白い試みであり、豪州の教育業界のレベルアップと底上げにつながるものであると考えることができ、ポジティブにその結果を見つめていくことができる。
なぜそこに思い立ったかというと、オーストラリアン・ファイナンシャル・レビュー誌上のこんな記事に出会ったからだ。
全文を読むには骨が折れるので、日本語の機械訳を載せておこう。なんて便利な時代になったんだろう。
チャールズ・スタート大学に規制当局の手
ジュリー・ヘアー 教育担当エディター 2021年6月6日 – 2.36pm
苦境に立たされているチャールズ・スタート大学は先週、ニューサウスウェールズ州議会から2020年の年次報告書の発表を免除されるという前代未聞の措置を取られ、同大学の財政と運営が危機に瀕しているとの憶測を呼んでいる。
その翌日、大学の最高幹部であるミシェル・アラン(Michele Allan)理事長とジョン・ジャーモフ(John Germov)副理事長代理は、オーストラリア大学会議の傍らで、国の規制当局の幹部と面会した。
チャールズ・スタート大学は、かつてないほどの財政逼迫に直面している。ジェフリー・チャン
オーストラリア最大の地方大学のひとつであるCSUは、近年、不正疑惑や組織的な財務不振などの問題に悩まされてきた。
また、前例のないことだが、CSUは、高等教育基準・品質機構(TEQSA)による再登録が数ヶ月延期されており、再登録期間も最長の7年ではなく、わずか4年であり、多くの条件が付けられている。
その中で、アンドリュー・バン前副学長は、契約終了まで18ヶ月も残したまま昨年6月に退任した。
同月、大学の評議会は、独立した監査を行い、連邦政府とニューサウスウェールズ州政府に報告書を提出する決議をした。Australian Financial Reviewによると、KPMGによるその報告書は、9月頃に予定されていたが、まだ引き渡されていないという。
ゲルモフ教授は、9月の職員への声明で、CSUは2020年初頭に1,620万ドルの構造的赤字を予測していたが、COVID-19は大学の収入に8,000万ドルの打撃を与えると予想していると述べた。
コースや職員数を削減した結果、2020-21年の会計年度には2,200万ドルの赤字になると予想していた。
CSUは150万ドルの現金しか持たずに2020年を迎えた。その流動資産総額は、2018年の1億6300万ドルから、2019年には9980万ドルに減少した。
国会議員が指摘した懸念事項
昨年10月に行われた上院試算の質問で、TEQSAのチーフコミッショナーであったニック・サンダース教授は、「いくつかの深刻な問題が(規制当局に)提起されており、それらを動かすには時間がかかるだろう」と述べた。
サンダース教授は、「2021年の第1四半期には、重要な情報が分析され、決定が下されるだろう」と述べていた。Financial Review紙は、これが実現していないと理解している。
同大学のバサーストとオレンジのキャンパスを管轄するCalareの連邦議員アンドリュー・ジー氏は、昨年、議会でCSUに対する懸念を表明した。
ジー氏によると、「CSUが公表している赤字に関する数字の信憑性」、「余剰人員の数」、「CSUの準備金と財務管理」について、学生、職員、地域住民から意見が寄せられたという。
ジー氏によると、大学の財務状況に加えて、アラン博士は「私のオフィスで、CSUが保有する車両の台数を説明できないこと、業務が行われたとされる12ヶ月後に提出された残業のタイムシート、不正行為の疑いや明白な不正行為、私や私のスタッフが知らない個人をニューサウスウェールズ州腐敗防止独立委員会に照会する可能性など、調査が必要な多くの組織的な問題を指摘した」という。
その後、大学の広報担当者はThe Canberra Timesに対し、「この話し合いは機密事項であり、大学は何台の車を所有しているか認識している」と述べた。
ジー氏はフィナンシャル・レビュー紙に、「これは非常に異例で気になることであり、報告書がどこにあるのか、なぜ他のニューサウスウェールズ州の大学の報告書と一緒に提出されなかったのか、説明していただきたい」と語った。
CSUのスポークスマンは、年次報告書とTEQSAとの会合について質問され、次のように答えた。”チャールズ・スタート大学の代表者はTEQSAと面会したが、その面会で議論された内容についてはコメントしない」。
TEQSAのスポークスマンは、規制当局が「機関のガバナンスと説明責任に関する懸念がメディアや当局に寄せられたことを受け、2020年11月にチャールズ・スタート大学のコンプライアンス評価を開始した」と述べ、「評価が完了するまでは、TEQSAがこれ以上のコメントをすることは適切ではない」とした。
この記事について学校にメールを送ったが、スタッフからは以下のような返答しか来ていない。
知らせてくれてありがとう。でも憂慮する必要はありません。卒業や、大学の継続的な運営が脅かされていることを示す情報はありません。
それはそうだろう。そしてもしかするとスタッフレベルでは情報が入っていない可能性もある。
実際にCSUでは、去年の時点ですでに116の専攻が消失または変更され、学生によっては学校から専攻替えの連絡が入っていたようで、色々な意味での問題が起こっていたようだ。監査報告書も提出が遅れているということは、何かあるのだ。
https://www.abc.net.au/news/2020-07-30/charles-sturt-university-cuts-courses-to-save-money/12506368
また、他の学校も似たようなものだ。以下のような記事も去年の9月付で発表されていたが、政府の援助は不透明なままなようだ。勢いのあるUSCのセリフも、その後の僕の処遇を見れば虚しく響くことだろう。おちゃらけで拡張を続けた挙句、一気に崩れていく様子が見える。
崩壊のリスクが高まる地方大
サリー・パッテン 編集主幹 2020年9月30日 – 4.01pm
メルボルン大学のフランク・ラーキンズ名誉教授は、今後5年間で留学生の数が激減し、政府の助成金が減ることで、大学が崩壊する可能性があると予測している。
”大学は大きなストレスを受けると思う」とラーキンズ教授は述べた。
ラーキンズ教授は、政府がこのパッケージによって地方の大学の入学者数が増加すると主張しているにもかかわらず、地方の大学が特に大きな打撃を受けると予想している。
”非常に大規模な合理化が行われなければなりません。複数のキャンパスを持つ大学は大きなプレッシャーにさらされるでしょう。私たちは、スタッフの減少を目の当たりにしてきました。問題は、これらのキャンパスのいくつかが存続できるかどうかだ」と、ラーキンズ教授は水曜日のAustralian Financial Review誌の高等教育サミットで語った。
ラーキンズ教授は、連邦政府の「Jobs-ready Graduates」パッケージは、学生1人当たり年間最大6%の政府資金の減少につながると予想されており、「政策が悪いだけでなく、タイミングも悪い」と主張した。
ラーキンズ教授の計算によると、サンシャインコースト大学は3,100万ドルの収入減、フリンダース大学は900万ドルの収入減が予想される。西シドニー大学は年間500万ドルの収入減、ジェームズ・クック大学は600万ドルの収入減、フェデレーション大学は500万ドルから600万ドルの収入減、エディス・コーワン大学は年間200万ドルの収入減になるという。
ラーキンズ教授は、「これはもちろん、これらの大学の持続可能性と実行可能性に影響するでしょう」と述べる。
これに対して、大学側は強気の姿勢を見せる。
USC大学の副学長であるヘレン・バーネット氏は、地域の大学は、地元で学ぶ学生のための奨学金を増やす措置や、家族が大都市から離れていく傾向から恩恵を受けるだろうと述べている。
バートレット教授は、将来が「非常に不透明」であることを認めた上で、連邦政府が新しい資金制度を見直すという決定を歓迎した。
”私たちは、このパッケージの実施を2年後に見直すことを約束してくれたことを非常に嬉しく思います。なぜなら、将来的に物事がどうなるかを予測することは非常に難しいからです。この見直しの約束は重要なものだと思います」とバーネット教授はFinancial Review 高等教育サミットで述べた。
このUSC大学のトップは、地方大学が地域社会や地元企業に根付いていることも有利に働くと述べる。
”地域の大学が持つ重要な利点は、地域に根ざし、地域社会とのつながりを持っていることです。私たちは企業と提携しています」とバートレット教授は語り、大学は企業との関係をさらに緊密にしていくだろうと予測する。
また、同大学では国内の学生数が増加しており、オンラインとオンキャンパスを組み合わせたブレンデッド・ティーチング・モデルの開発にも力を入れているとしている。
ウーロンゴン大学の副学長は、この資金援助パッケージは、国内の学生数にさらに資金を投入するものであり、外国人留学生が減少している中で政府が支援している理由の一つであると述べました。
“短期的には、2021年、2022年、2023年に留学生の数が再び増え、過去の入学者数のようなものが戻ってくることで、キャッシュフローが得られるので、このパッケージは非常に重要になると思います」。
実際には、USCでは、ほぼほぼ対面授業がなくなり、ラボなどでの授業もどんどん減少している。スタッフも減らされており、かなり危ない橋を渡っているのだ。CSUはバーチャル留学フェアには顔を見せられず、USCはといえば出展はしていたものの、景気がいいはずもないことは前回言った通りだし、今の体制ではまともな授業などできるはずがない。始まってみたらオンラインだったとか、先生に会えないとか、そんなオチになるのは目に見えている訳で、こんな状況の学校に行くのは、かなりおめでたいカンガルー好きしかいないはずだ。バーネット副学長というのは昨年他学(下位校)から転任したばかりの副学長で、いわば学校経営の「プロ」のはずなのだが、当時は状況が見えていなかった恐れもある。もしかすると立て直しに来た可能性もあるが、少なくとも僕の問題では手下のヘマで大失敗を犯している。さらにコロナが大爆撃を加えた今、いわゆる「プロ経営者(日本では◯IXILや◯ネッセの元トップのせいでネガティブな意味になりつつあるが)」は歴史の蓄積にあぐらをかけない状況が暴露しており、経営者なる存在の化けの皮が剥がされつつある。
しかしその一方では、我々学生にも選択眼が求められる時代になっていると言える。オーストラリアの大学だけでなく、母校がなくなることは昔からザラにあった話であり、僕もなくなりはしないものの、今になって振り返ってみたら偏差値が10以上落ちている母校は存在する。これはどちらも経営手腕の問題であって、卒業生への裏切りに他ならない。
そこでどうするのか。特にオーストラリアのような外国人の学費の高い国に関しては、日本のエージェントは一緒に出資してでも監査と財務診断をすべきではないのだろうか。特にこの段階においては、各大学の財務体質の比較や経営の健全性・持続可能性についての診断は重要であり、今度母校が母校として威力を発揮してくれるかを分析する必要は大いにあるのだ。もちろん、エージェントフィーをもらって成り立つ業界であるが故に、厳しい指摘はできないだろうが、より良い学校を学生に勧め、更により良い学校により良い状態で生き残ってもらうことで、商品価値を高めることも、エージェントの立ち位置的には間違ったスタンスではないと思う。
学生やその親にそうした力があれば、もちろんそれでもいい。過去の財務データと、この2年の落ち込みを計算した上で、更に学術的実績を調査し、しっかりとした学校に通うことは、最低でも自分の人生に責任を持つことにつながるからだ。
今回は結論を出しておこう。留学を志すなら、まずは学校の体質・体力を調べよ、だ。豪州の大学にいる日本人の経験談はかなりの数がネットで拾える。しかし、残念ながら僕のように問題を指摘しているものは少ない。そして、今はまさに隠れていた問題が突出している時期であり、これから留学を志す人には、よくよく調査した上で学校選びをして欲しいと思うのである。渡豪してから「こんなはずじゃ」では遅い。そして、コスパの悪い大学、信用できそうにない学校は、真っ先に切っていくべきだ。そういう調査をしないで海外に出ることは、留学先の政府のATMになることに他ならない。特に、永住ビザの前菜として教育を高価に売りつける豪州では、多くの学生が同じ思いをしている。そんなことにならぬ前に、まずはバランスシートを手に入れて読んでみたいものだ。GoogleでAnnual Reportと学校名を入れれば、希望の学校のサイトの当該ページに飛べる。是非お試し頂きたい。
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